ロングインタビュー

【PART 1】健康長寿TOKYOを 都民ファーストで明るくつくる

――都議会議員に初当選してから、もうすぐ4年。どんな成果がありましたか?

「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」を議員提案し、成立させたことが強く印象に残っています。実は、この25年間で議員提案の政策条例は、これが2本目。都議会民主党(当時)の議員提案による「省エネ推進条例」(2011年)以来でした。当時審議を行う厚生委員会に所属し、都議会で連携している都議会公明党さんとの共同提案で、実現できました。

 

2017年7月に初当選し、すぐに会派(都民ファーストの会)でこの条例化を取り扱う厚生委員会の事務局長に就任しました。多くの団体とヒアリングなどを繰り返して調整した結果、(議員就任後3ヶ月目の)10月の定例会で可決、成立にこぎ着けました。先輩議員の方々や弁護士でもある同じ会派の岡本こうき都議が都医師会などとの間に立って尽力してくれました。都議1年目の仕事が実り、達成感も大きかったです。

受動喫煙防止の街頭演説会


――「子どもを受動喫煙から守る条例」から、私たち都民が得るものは何ですか?

受湯喫煙防止条例ヒアリング

受動喫煙防止条例ヒアリング

日本で年間1万5千人が受動喫煙の被害にあって命を落としているといわれます。喫煙でがんになるのは全体の3割。その中に受動喫煙も含まれています。日本対がん協会は受動喫煙と喫煙の両方をなくすことを訴えていますね。そのがんのリスクを減らし、それによる社会全体の損失を減らすことができます。

 

条例によって、がんをはじめ多くの疾患の発症リスクは確実に低減されます。それは、たばこから直接吸い込む煙よりも受動喫煙で吸い込む煙の方が多くの有害物質を含むためで、2割以上の疾患リスクが低減されるとも言われています。

 

何より、理不尽にがんになる人がいなくなります。子どもは受動喫煙したくなくても、もの申せません。「子どもを受動喫煙から守る条例」は理念条例ですが、家の中でも吸わないと定め、「法は家庭に入らず」という一般論を抑えて、家庭内に踏み込んで、家の中でも吸わないように定めたことは画期的だったと思います。


さらに、社会保障費の削減に最も効果のある方法でもあります。予防医療を進めて健康を増進するとともに、経済としては関係業界に適切な報酬をもたらし、外貨も稼ぎつつ、増大する一方の社会保障費を抑えたいとの思いがあります。

 

東京は世界的にも超高齢化が進む先進地です。高齢化の中でいろんな課題が生まれますが、それを否定的にとらえるのではなく、乗り越えてソリューション(解決法)を見出せば、経済的にも果実を得られるアドバンテージ(利点)になります。

 

その後、都と連携し、国に先駆けて「東京都受動喫煙防止条例」を制定することもできました。国の基準より厳しい内容で、「望まない受動喫煙を防ぐ」という考え方、特に弱い立場にある従業員を守りたいとの思いが込められています。条例が制定され、東京都内の飲食店のうち、少なくとも約80%以上が禁煙になる見込みです。

受動喫煙防止の街頭演説会


――予防医療のエキスパートとして、「健康長寿TOKYO」づくりが大きな公約ですね。

都議会での一般質問

病気になってしまうと、どうしてもQOL(生活の質)が低下します。病気にならない取り組みこそが健康長寿の本質ではないでしょうか。

 

化学品メーカー研究所長時代から、2014年に新たに制定された国の機能性表示食品制度の幹事会社の一人として、官民連携で健康増進や予防医療効果のあるヘルスケア産業の育成に食品分野で取り組みました。その経験を生かし、都民の健康づくりとして支援し、都のさらなる成長の足掛かりにもするよう、尽力してきました。


都議会でも3度にわたって一般質問で取り上げ、予防医療に貢献する新産業としてヘルスケア産業の領域を拡大して発展させることの可能性や必要性を訴えました。2020年4月、都立産業技術研究センターにヘルスケア産業支援室が開設され、関連事業がスタートしたことで一つの形になりました。

 

2021年4月からは都立食品技術センターと統合され、機能性表示食品の開発など、バイオ基盤技術も活用した食品分野の支援、必要な専門人材の確保や試験機器の整備を進めます。製品などの開発後、最長1年間にわたり販路開拓やマーケティングなどで、事業化に結び付ける取り組みも始まります。

――昨年以来、新型コロナウイルスの対策にも追われました。

会派の医療政策研究会の事務局も担当していることもあり、新型ウイルス感染症プロジェクトチームのメンバーとして、東京都医師会や国立国際医療研究センター国際感染症センターなどの専門家の意見を聴くなど、コロナ対策でも尽力しました。我々会派でまとめた意見の多くが都の緊急支援策に反映されました。

 

感染症が落ち着いている合間をぬって駅頭に立ち、杉並区民の意見に耳を傾けました。「引きこもり予備軍が増えている」「オンライン授業についていけず困っている」といった切実な声を聞きました。また、医療従事者への支援活動として、地元中核病院「河北総合病院」の方々にお弁当を贈る活動にも携わりましたね。

JR高円寺駅北口での街頭演説(コロナ禍)


また、主に東京に拠点を置く企業を訪問し、経営者や社員の方々のご意見を多くいただきました。喫緊の課題の把握やアフターコロナの準備に生かし、都への質問や要望に反映させていただいています。

 

「東京都新型コロナウイルス感染症対策条例」では当初、新型コロナの検査を正当な理由なく拒否した場合、5万円以下の過料を科すことを会派として提案しました。罰則規定付きの条例としては初の提案でした。その後、国の法改正で罰則が盛り込まれました。賛否のお声をたくさんいただきましたが、都議会での議論は貴重な問題提起にはなったと思います。

――2年目と3年目は文教委員会で活動しましたね。

オリンピック・パラリンピックを大きなきっかけとして、東京都独自の多彩な有形無形の芸術文化を創造、発信し、いずれは都の新たな成長の柱に育てたい。そんな強い思いで都の担当職員と接し続けました。特に、コロナ禍において、心を豊かにしてくれる、感動を与えてくれる芸術文化がなくなる可能性がありました。都民に芸術文化を浸透させるためには、江戸東京の多彩な個性を活かした新たな創出が肝要です。そこが難しいですけれども、豊かな都民生活を夢見ると、やり甲斐がある仕事だと思います。


オリンピック・パラリンピック準備特別委員会では、東京都のさらなる発展の足がかりにするべく、成功に向けてオリンピック・パラリンピック準備局の局員と一丸となって活動してきました。大会の後も恒久利用する12施設が都民に親しまれ、健康維持・増進に寄与するよう審議を重ねてきました。

 

パラリンピックの成功なくして東京2020大会の成功はない。そんな思いで、パラリンピアンとの勉強会も重ね、局とも議論を重ね、パラリンピックの機運盛り上げやパラスポーツの振興にも積極的に取り組んできました。不可能(Impossible)だと思えたことも、 ちょっと考えて工夫さえすればできるようになる(I'm possible)」という、 パラリンピックの選手たちが体現するメッセージに強く共感します。


――コロナ禍で文化事業は打撃を受けています。都の文化政策の出番ですね。

コロナ禍で文化の灯を絶やさないように、小池百合子知事が中心になって「アートにエールを! 東京プロジェクト」という芸術文化活動支援事業を実施しました。デジタル配信の技術を加速させ、東京都の芸術・アーティスト支援のすそ野を広げた意義がありました。

 

第1弾は、外出できないアーティストに自宅でアートを楽しんでもらえるように、アーティストに10万円を提供して動画を制作してもらった。約4千人から応募があり、「芸術家の卵」の方々からたくさんご応募いただきました。第2弾は、動画配信を苦手にしていたライブハウスなどの施設管理者がライブ配信を始めるために支援しました。日本であまり浸透していなかったライブ配信で持続的に経営していく足がかりをつくれたのではないかと思っています。

我々は、都議会の代表質問でこの事業を高く評価し、「せっかく見いだされた新たな芽が育つように、優秀なアーティストが活躍するステージをつくり、芸術文化を創出してほしい」と継続的な取り組みを訴えました。都も、意欲的な対応を進めつつあります。ビートルズを生み出した英国の港町リバプールが、今や世界的な「芸術の街」に生まれ変わったように、東京も優秀なアーティストを発見・育成できる街になるよう働きかけていきます。

 

委員会での質疑風景


――今後、力を注いでいきたい政策は?

がん患者会へのヒアリング

やはり、がん対策、特にがん予防と早期発見です。コロナ禍で検診や一般医療、小児科や耳鼻咽喉科などはあまり受診されていない。検診に行けない人が多い。2人に1人が、がんと診断され、3人に1人が、がんで亡くなる時代。不治の病と言われていた時代から、早期発見なら9割が治るとされ、早期発見が遅れることにより3~5年で亡くなってしまいます。亡くならなくてすむ命を救いたいという思いが強まっています。今は、がんになっても仕事をし、日常生活をしながら治療をするという、がんとの共生が浸透しつつあります。また、企業も社員が健康に働けるよう、がん対策に積極的になりつつあります。

 

がんに関する情報や技術の進歩、社会的機運の高まりの中、がんは克服できる病気となった今、私は、地域社会と一体となって、がんとの共生社会の早期実現に向けて尽力したいと考えています。


そして、身体機能や認知機能の低下を防ぐためのフレイル対策ですね。フレイル予防に詳しい東京大学教授・高齢社会総合研究機構長の飯島勝矢先生らにもご協力をいただき、会派内の勉強会も開くなどして基盤づくりをしています。

 

コロナ禍でテレワークが進み、自宅で過ごすことが多くなりました。運動不足や太りすぎによる体調不良や発病が懸念されています。健康維持・増進や予防医療の取り組みはコロナ禍で棚上げの状態ですが、重要課題と認識しています。

フレイル予防対策 会派勉強会


自宅でできるオンライントレーニングなどの普及や、ボディービルなど身体作りに関する専門の知識や情報もプラスです。欧米のスポーツ界で普及している考え方ですが、運動には心にも体にも薬同様の効果効能があります。そうした考えを広く知ってもらうことも大切だと考えています。

フレイル予防対策 専門家訪問

コロナ禍で停滞している健康維持・増進や予防医療の取り組みの対策を、何とかして再び活性化して進めたいですね。将来的には、都による健康長寿都市宣言を絶対に実現したいと思っています。そのためにも、意識の浸透、施設の拡充、産業の発展など、それにふさわしい取り組みを今まで以上に重ねていきたいと思います。

 

都民の皆さんと明るく元気に、健康長寿の世界首都TOKYOをつくる理想に向かって、これからも頑張ってまいります!